ないものねだり

だって、ないんだもの

純化の一滴

私が研究する理由。それは、あの一滴を味わうためである。 自然の多くの側面や事柄を凝縮に凝縮を繰り返し、純化に純化を繰り返し、残った最後の一滴。これを味わう為だけに私は日々を生きている。それを味わいたい高揚感、期待感。それだけが私を突き動かす…

天才と呼ばれなくても

天才かどうかはどうでも良くなった。 その形に触れられれば。 たとえ、光を通して見えるものがなくても、言語を通して見える世界が私の眼前にはいつでも広がっている。ただ、それは全てが鮮明に見えているわけではない。あるところは、鮮明にくっきり見えて…

お一人様

「新鮮なエビとホタテを存分に使ったクリームパスタになります」 皺一つないスーツを身に纏った給仕が上品に料理を私の目の前に置いた。 「ありがとうございます」 料理に無邪気に目を輝かせているのを隠しながら、小さくお礼をいった。 「それでは、お楽し…

言われたこともできない僕ら

言われたこともできないわけじゃない 言われたことはできないことが多いけど、言われなくてもできることは多くある 舐めるなよバカが ばーかばーか

欲望の太陽

溢れる欲望が止まらない。 身体がその欲望を満たそうと先走り、指先と足先の神経がチリチリと今にも弾けそうになりながら、私の妄想を形にしようと躍起になる。鳩尾には何かが凝集し、生理的には何かを吐き出したいところだが、何も出てこない。 私の妄想が…

大人の階段

世の中には面倒くさい事がたくさんある。それは明らかに私がやりたくない事だ。しかし、私がやらなくてはいけない。だから面倒くさい。 それらは面倒くさいから、ついつい引き延ばしにしてしまう。でも、これは最悪の手だ。面倒くさいことを引き伸ばすと、そ…

15フンゴト−4

「はい、15分です」 「え」 「15分経ったので、一旦休憩です」 「あ、はい」 まだ、ぼーっとする頭で、反射的に返事をした。 「体の状態は悪くないですね」 「はぁ」 頭が何かで覆われている。体も固定されている。四方八方で、機械がウィンウィンと呻いてい…

無痛

刺された。かなり深い。 心拍数が上がり、心臓の鼓動が頭蓋骨を力強く叩いている。体は硬直してしまい、動かない。少し正気を取り戻し始めた時は、上がった血圧によるものなのか、硬直して動かせない手足の感覚がひどく鋭敏に感じられた。そんな手先で、恐る…

15フンゴト−3

「違う、そうじゃない」 私が何者かというのは、哲学的に考えたかったわけでなく、私の、例えば、生物学的な特徴はなんだろうかという事である。そういう意味で、私が認識したら私であると納得するのは、少し怠慢である様に感じる。というのも、私自身の物質…

一人遊び

私は回った。回り続けた。 初めの内は、誰かに助けてもらったのを覚えている。その人は気づいたらもういなかったけど、私は回って、回って、回り続けた。ただ、それが楽しかった。 知らない内に、近くに私よりも図体の大きなやつが回っていた。そいつは隙が…

結果として

生きているか、生きていないかなんて、正直どうでもいい。もちろん生きていないと色々な事ができないし、自分がやりたいこともできない。ただ、「今、これをしてみたい」と思っていても、それをできないで生きているなんて、死んでいるのと同じで。それだっ…

15フンゴト−2

「あいつら、そもそも何者だ」 勝手に他人だと思い、つまり、私と同種だと勘違いしていた。いや、勘違いかどうかもまだ分からない。そもそも、奴らが私と似た存在で、私と同じ言語を話すとは限らない。 あぁ、なるほど。また、驕ってしまったわけだ。私は何…

15フンゴト−1

右手に持ったガラスのコップには飲み終えた炭酸の泡が奇跡的に残っている。それにも構わず、左手で蛇口の取手を押し上げ、そこから勢いよく流れ出る水とその中の新たな泡にかき消されるのであった。 私はどこで生まれたのかも分からない。気がついたらここに…

ヨクフカ

ああすればうまくいくだろう、という事は感覚でわかる時がある。 今までの人生で培った感というやつだ。ただ、得てして自分のやりたい事とそれが一致する事は、なかなか無い。少し格好をつけて、何があってもこれをやるんだと、気概を持つ。確固たるものであ…